【セミナーレジュメ】円満な財産承継のための、『信託の上手な使い方』
- 2017.01.13
仙台市青葉区二日町1番23号-10F
官澤綜合法律事務所
弁護士 官 澤 里 美
TEL022-214-2424.FAX214-2425
円満な財産承継のための、『信託の上手な使い方
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第1 信託の基礎
1 信託とは
自分の財産の管理.処分を、相手を「信」じて「託」すこと。 十字軍が起源?
特定の者に財産を譲渡し(信§3)、同人が一定の目的に従い、財産の管理又は処分等の同目的の達成のために必要な行為をすべきものとすること(信§2①)。
◇財産を譲渡・信託
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◇信託目的で財産の管理・運用・処分
※委託者・受益者により監視・監督の外、
信託監督人・受益者代理人のチェックも可。
◇財産からの利益、使用等の受益
※第2.第3と受益者を指定することも可。
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※信託終了時の財産の行方
①帰属権利者 →②委託者又はその相続人 →③受託者
2 家族信託と呼ばれているものは
信託銀行等を利用の営利目的の商事信託ではなく、自分の老後や死亡後の財産の管理.処分を信頼できる家族等に託す、家族の、家族による、家族のための信託。
3 信託のメリット
数世代先までの相続先指定
→遺言では不可能だが、信託なら第2受益者や帰属権利者の指定により可能!
資産の積極的活用や生前贈与
→成年後見では困難だが、信託なら信託契約への記載しだいで可能!
(注).1 信頼できる受託者が必要。
.2 信託そのものが節税とはならない。
.3 信託は遺言等に比べて複雑で難しい。
預貯金の信託財産化 や 既存の債務、新たな債務の処理方法
信託契約の信託目的や信託事務の記載方法
第2受益者や帰属権利者、第2受託者の指定 等々
第2 家族信託の具体的な使い方
[例1] 相続人は同居する長男Bと嫁いだ長女Cで、主な財産は自宅・農地と隣接のアパート。Bに多くを相続させたいが、Cにもある程度のものをわけてやりたい。
例えば、次のような遺言を行っておくと揉めないし、相続の手続も楽。
「すべての財産をBに相続させる。
Bは前項の負担として金##万円をCに支払う。」
なお、自宅・農地はB、アパートはBCに相続させるとの遺言は、アパート管理でトラブルの恐れがあり避けること。
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BとCは仲が良く揉めない?
→Aの死後は仲違いするかもしれない。
→揉めなくとも遺言があると相続手続きが簡単。
但し、遺言のみだとAが呆けてきたらアパート管理や節税対策が困難。
例えば、次のような家族信託で解決することも可能
・全不動産を信託財産として、Aを委託者兼受益者に、Bを受託者兼帰属権利者、CをAが死亡後に一定期間アパートの収益の半分の受益権を有する第2受益者と指定し、アパートはその一定期間の経過時、自宅農地はA死亡時に終了との信託設定。不動産は信託を原因としてBに移転登記し、管理.処分は信託の目的に従いBが行う。
・Aの死亡により自宅農地は信託終了でBに帰属し、その後一定期間アパートの収益の半分はCに支払われ、アパートはその後信託終了でBに帰属。
※アパートがBCの共有となってしまった場合のトラブル防止策
→BCの仲が良いうちに、BCを委託者兼受益者に、例えばBの子のDを受託者に指定する家族信託の設定等
[例2]障碍のある子供の将来を甥に託し、子供死亡後は甥に相続させたい。主な財産は自宅と隣接するアパート。
財産はCに相続させる旨の遺言。相続後の財産管理をDに成年後見人として行ってもらう?
⇔ 成年後見では財産管理に制約&C死亡後の財産は相続人不存在で国庫に…
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例えば、次のような家族信託で解決することも可能
・Aを委託者兼受益者に、Dを受託者兼帰属権利者に、アをAが死亡後の第2受益者に、CをAアが死亡後の第3受益者に指定、AアCの死亡時に終了との信託設定。不動産は信託を原因としてDに移転登記し、管理.処分を信託の目的に従いDが行う。
・Aが高齢となったらCの成年後見人として弁護士等の外部専門家を選任。
・Cの死亡時に信託終了、残余財産をDが取得。
[例3] 子供がいない夫婦で、先祖代々の不動産を一族の者に相続させたい。
CをAアの養子にする? ⇔ そこまでは…
アにCに遺贈する旨の遺言を書かせる? ⇔ アが書き直しも…
例えば、次のような家族信託で解決することも可能
・全不動産を信託財産とし、Aを委託者兼受益者に、Cを受託者兼帰属権利者に、アをAが死亡後の第2受益者と指定、Aアの死亡時に終了との信託設定。不動産は信託を原因としてCに移転登記し、管理.処分を信託の目的に従いCが行う。
・Aアの死亡時に信託終了、残余財産をCが取得。
※この信託は、高齢者が子供に祝福されて再婚するためにも利用できる!
例えば、自宅等を所有するイが、同級生ウと再婚しようとしたら相続で揉めることを恐れたCから反対された場合、次のような信託で解決可能。
・イを委託者兼受益者に、Cを受託者兼帰属権利者に、ウをイが死亡した後の第2受益者と指定、イウの死亡時に終了との信託設定。不動産は信託を原因としてCに移転登記し、管理.処分を信託の目的に従いCが行う。
・イウの死亡時に信託終了、残余財産をCが取得。
[例4] Aは、㈱甲のオーナー社長で、長男Bはその専務。Bの頑張りもあって甲の業績が順調に伸びているので、Aは、甲をBに承継させようと考えているが、まだしばらくは自分が社長を続け、Bの社長としての適正を見極めようと思っており、適正がないと判明した場合は次男C等への変更もないわけではない。
例えば、次のような遺言での解決も考えられる。
「Cに次の財産を相続させる。
※㈱甲の株式以外の遺留分以上の財産
他の財産はすべてBに相続させる。」
なお、㈱甲の株式をCにも相続させると、㈱甲の将来の経営で揉めることがあるので避けること。 |
但し、㈱甲の株価が上昇していくと相続税が上昇していく問題がある。
かといって、現時点での贈与にはまだ踏み切れない…。
例えば、前記の遺言に加え、次のような家族信託で解決することも可能
・㈱甲の株式を信託財産として、Aを委託者兼受託者、Bを受益者兼帰属権利者に指定する信託設定。
・税金は実質課税のため、信託では受益者となった時点で課税され、信託設定時にBに㈱甲の株式についての贈与税が課税される。
・㈱甲の経営はAが続け、Bに社長の適正がないと判明した場合は、信託の内容を変更等する。それ以外の場合は、Aの死亡で㈱甲のAの株式の信託が終了し、Bが取得することが確定。