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遺言の無効主張

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遺言の無効を主張できる場合としては、遺言の種類(自筆証書遺言か,公正証書遺言か)に応じて,以下のような場合があります。
 

(1) 自筆証書遺言の場合

 自筆証書遺言とは、遺言者が、その全文、日付および氏名を自筆し、押印することで作成することができる遺言です(ただし,2019年1月13日以降は、法改正により財産目録については自筆でなくとも可能となります)。
 
 この自筆証書遺言は、遺言の中で、最も簡単に作ることができ、それだけによく使われる遺言でもあります。しかし作成が簡単な一方、紛失・偽造・変造の危険があったり、内容が不明確だったりするという理由で遺言の有効性が争われやすい遺言でもあります。
 
 このような自筆証書遺言については、次のような観点から遺言が無効であると主張できる場合があります。
 

① 遺言が法律上の決まりに従って作成されていないと主張する

自筆証書遺言は、作るのが簡単とはいえ、遺言者が、その全文、日付および氏名を自筆・押印する必要があるなど一定の法律上の決まりがあります(ただし,2019年1月13日以降は、法改正により財産目録については自筆でなくとも可能となることは前述のとおりです)。このような、法律上決められた方式に従って作成されていない場合、そのことを理由として遺言全体が無効とされることがあります。
 
たとえば、パソコンで遺言を作成・印刷し、そこに署名押印したとしても、これは全文が自筆されていないことになるので、無効となります。また、高齢者が遺言を作成する際、自分一人では手が震えて書くことができないため、誰かに手を取ってもらい書くという場合もあります。しかし、最高裁は、このような方法によって作成された自筆証書遺言につき、無効となる場合があるとしています。
 
したがって、もし自筆証書遺言がこのように法律上定められた方式に従って作成されていない場合には、そのことを理由として遺言が無効であると主張することが考えられます。
 
弁護士にご相談いただいた場合、弁護士が、その自筆証書遺言が法律上定められた方式に従って作成されているかを確認し、遺言の有効性を検討します。
 

② 遺言能力がなかったと主張する

 遺言能力とは、遺言を有効に作成することができる能力をいい、具体的には,遺言の意味内容を理解し、その結果としてどのような効果が発生するかを理解できるだけの能力のことを言います。原則として、15歳に達した者であれば遺言能力があります(民法961条)。しかし、たとえ15歳以上の人でも、自分の遺言の意味内容やその効果(誰が何の財産を取得するか等)を理解することができないような場合、遺言能力が否定され、遺言は無効となります。
 
 たとえば、亡くなった方(被相続人)が、遺言を作成した時点では認知症であった等、遺言の意味内容や効果を理解していたか疑わしいような事情がある場合、遺言作成時に遺言能力がなかったため遺言は無効であると主張することが考えられます。
 
 実際に遺言能力が否定されるか否かは、様々な事情を考慮した上で判断されます。したがって、生前に認知症だと診断されていても遺言能力が認められる場合もありますし、逆に認知症と診断されていなくても遺言能力が認められない場合もあります。
 
弁護士にご相談いただいた場合、弁護士が、医師による診断の内容のほか、生前の被相続人の様子、遺言の内容等の様々な事情を収集・分析し、遺言能力の有無を争うことができるかを検討いたします。
 

③ 遺言が偽造されたものであると主張する

遺言が偽造、すなわち遺言者以外の他人によって作成されたものであると主張する場合もあります。
たとえば、出てきた遺言書の文字が被相続人(亡くなった方)の他の文書の文字と明らかに異なる場合や、生前疎遠だった親戚に全て相続させる等、遺言の内容が極めて不自然であるような場合等には、遺言の偽造の可能性も考えられます。
 
遺言が偽造か否かは、筆跡鑑定すれば良いと思われるかもしれませんが、裁判では必ずしも筆跡鑑定のみで決まるわけではなく、遺言の内容等の様々な事情を考慮した上で判断されます。
 
弁護士にご相談いただいた場合、弁護士が、筆跡や遺言の内容等の事情を収集・分析し、偽造遺言であるとされる可能性があるかを検討いたします。
 

(2) 公正証書遺言の場合

 公正証書遺言とは、公証人という公務員が、公正証書という文書によって作成する遺言です。公正証書遺言を作成するためには、証人2人の立会いの下、公証人という公務員の面前で、遺言者が公証人に遺言の内容を口で伝え、公証人は遺言者の意思を文書にまとめます。
 
 このように作成された公正証書遺言は、公証人が介在することから、遺言が無効とされることはほとんどありません。しかし、次のような場合は、公正証書遺言が無効とされる可能性もあります。
 

① 遺言能力が否定される場合

自筆証書遺言と同じで、遺言者が、遺言する時に、遺言の意味内容やその効果を理解できる能力がなかった場合、公正証書遺言は無効となります。
 
もちろん、公証人は、遺言者が、遺言の意味を理解できているか確かめながら遺言を作成するため、自筆証書遺言に比べ、遺言する時に遺言能力がなかったと判断されることは多くありません。しかし、公証人の確認が不十分であった場合等は、遺言能力がなかったと判断される場合もありえます。
 
弁護士にご相談いただいた場合、弁護士は、公正証書遺言を作った時、遺言者は遺言の意味を理解できる状態だったのか、公証人はどのようにして遺言者の遺言能力を確かめたのか、公証人のした確認は十分といえるのかを調査し、公正証書遺言が無効とされる可能性の有無を検討いたします。
 

② 口授が行われなかった場合

 口授とは、遺言者が、公証人に対し、遺言の内容を口で伝えることをいいます。このような口授が、実際には遺言者がただ頷いていただけであったり、「はい」という返事をしていただけと認められる場合は、適法な口授がなかったものとして公正証書遺言が無効とされる可能性があります。
 
 弁護士にご依頼いただいた場合は、適法な口授がなされたかを調査し、公正証書遺言が無効とされる見込みがあるかを検討いたします。
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