亡父の遺産分割がなかなかまとまらないのですが、遺産のアパートの賃料を長男が独り占めしています。どうしたらよいでしょうか?
- 2021.10.13
A:亡父の遺産分割がなかなかまとまらないのですが、遺産のアパートの賃料を長男が独り占めしています。どうしたらよいでしょうか?
Q:遺産であるアパートから生じた賃料は、遺産のようにも思えますが、最高裁判所は、相続開始から遺産分割成立までの賃料について、遺産とは別個の財産で各相続人が相続分に応じて分割単独債権として取得すると判示(平成17年9月8日)しています。
弁護士の解説
遺産であるアパートから生じた賃料は、遺産のようにも思えますが、最高裁判所は、相続開始から遺産分割成立までの賃料について、遺産とは別個の財産で各相続人が相続分に応じて分割単独債権として取得すると判示(平成17年9月8日)しています。そのため、他の相続人は、独り占めしている長男に対し、相続分に応じて取得している自己の債権について、不当利得として請求できることになります。この請求の裁判所での解決方法は、家庭裁判所での遺産分割の手続ではなく、地方裁判所や簡易裁判所での裁判となります。しかし、遺産分割とは別に裁判を行うのは大変です。また、賃料は毎月発生し続けますので、どのタイミングで、どのような内容で裁判を起こすかは悩ましいところです。
相続人全員が賃料を遺産分割の対象に含めることに合意すれば、家庭裁判所での遺産分割の手続の中でまとめて解決することが可能ですが、独り占めするような相続人は、そのような合意を行うことには抵抗することも考えられ、そのような場合に何か良い方法はないのか…
考えられるのは、令和3年4月の民法改正で新設された共有物管理者を共有者の持分の過半数で選任したり(民法第252条)、同改正で適用範囲が拡張された相続財産管理人を裁判所に選任してもらい(民法第897条の2)、アパートを適切に管理してもらって賃料の独り占めを防ぐ方法です。この改正が施行されるのは令和5年4月頃の予定ですので、施行されたら利用を検討してみて下さい。