遺産分割審判で特別受益の主張が認められた事例
- 2019.06.04
2 そこで,まずは遺産の全容を把握するために,母名義となっている預貯金の取引履歴を取り寄せ,調査を行いました。
すると,母の生前,日常生活費を大幅に超える出金が多数あることがわかりました。
兄は,母の生前から,母の税金対策を含めた財産の事実上の管理を行っていたなどの事情から,兄に対する生前贈与の存在が強く疑われるものでした。
また,母は生前,株式をもっていたとの話だったので,その株式の調査をしたところ,生前に,その株式は兄やその妻に名義変更されていることが判明しました。
3 そこで,兄に対する生前贈与の可能性が高い出金や株式の譲渡をリストアップしたうえで,家庭裁判所に調停の申立を行いました。
調停では,当方からは,リストアップした出金や株式の譲渡については,兄に対する生前贈与がなされたものであり,特別受益(遺産の先もらい)にあたるとの主張を行いました。
兄側は,一部の生前贈与については特別受益にあたることを認めたものの,一部については,相続人にはなっていない兄の妻に対する生前贈与であり,特別受益にあたらない,などとして反論をしてきました。
当方からは,仮に形式的には妻に対する贈与であっても,兄と生計を同一にしているものであるから,実質的には兄に対する生前贈与として,特別受益にあたる,と主張しました。
4 調停では,特別受益の点のほか,どの不動産を取得するか,という点についても争いがあり,話し合いでは決着がつかなかったため,最終的には審判となりました。
その結果,当方の特別受益の主張をほぼ認めるとともに,不動産についても依頼者の希望を認める内容の審判が出されました。
5 遺産分割の協議を行う前提として,遺産の調査を行うことが不可欠ですが,預金については残高だけでなく,取引履歴を丁寧に調査することにより,特別受益や他の遺産の存在が判明する場合もありますので,遺産分割にあたっては,銀行からは残高証明書だけでなく,過去の取引履歴も取得しておくことをお勧めします。
ご依頼いただければ,当事務所で取引履歴を取り寄せた上で調査をすることも可能ですので,お気軽にご相談ください。
(弁護士 小向俊和)