内縁配偶者に対する相続人からの家の明け渡し請求を排除した事例
- 2019.04.15
1 Aさんは,10年以上,入籍こそしなかったもの,Bさんと,Bさんが所有する家屋で,夫婦同然の生活を送っていました。
2 ところが,Bさんが突然お亡くなりになってしまいました。
しばらくすると,Bさんの法定相続人であるBさんの兄弟から,「Bの家は自分たちが相続したから,即刻明け渡すように」との文書が届きました。
3 Aさんは,長年Bさんの家屋に居住しており,すぐに他に転居するあてもありません。
そこで,しばらくこの家に住まわせてもらえないか,Bさんの兄弟に頼みましたが,聞き入れてもらえず,Bさんの兄弟から,家屋の明け渡しを求める裁判を起こされました。
4 当事務所は,Aさんから,裁判の対応の依頼を受けました。
裁判では,これまでAさんとBさんが夫婦同然に生活していたこと,他方,Bさんの兄弟はこれまでこの家に居住したこともなく,また,この家を使う必要性もないので,明け渡しを求めるのは権利の濫用である,などといった主張をしました。
一審の判決では,残念ながらAさん敗訴の判決でした。そこで控訴したところ,高裁では,権利濫用により建物明渡請求を棄却する,という内容の逆転勝訴判決を得ることができ,この判決はそのまま確定しました。
もっとも,Aさんは,勝訴判決を得たものの,その後もこの家を使用し続けることができるという法律上の権利を取得したわけではありません。そこで,その後,AさんとBさんの相続人との間で,Aさんが安い賃料でこの家屋を借りる,という内容の契約を結び,正式にこの家を利用する権利があることを明確にしました。
5 法的にはたとえ権利をもっているような場合でも,権利行使の方法や内容が妥当でないような場合においては,「権利濫用」や「信義則違反」などといった一般条項により,権利主張が認められない場合もあります(もちろん,このような一般条項による権利主張の制限は,そう簡単に認められるわけでもありませんが)。
一見,相手方の主張への反論が難しいと思われる場合でも,弁護士に相談することにより,何らかの解決の糸口が見つかる場合もあります。
法律問題でお困りのことがあれば,早めに一度弁護士に相談されることをお勧めします。
(弁護士 小向俊和)