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相手方の特別受益の主張を排斥し,ほぼ主張通りの内容で遺産分割協議を成立させた事例

2021.05.27

ご相談の背景・争点

依頼者の母が亡くなりました。

相続人は依頼者を含め兄弟3名でしたが,兄弟の1人から遺産分割調停が申し立てられました。

その兄弟からは,依頼者に対し,「依頼者名義のマンションの住宅ローンを母がずっと支払っていた。これは依頼者の特別受益にあたるから,依頼者の取得分は減らすべきである」という主張がなされていました。

当初,依頼者はご自身で調停に対応していましたが,その対応に苦慮されたため,当事務所に相談され,受任することになりました。

弁護士の対応・結果

依頼者に話によれば,もともとこのマンションは,母が購入を希望していたところ,母の名義ではローンを組むことができなかったために依頼者名義でローンを組んだものであり,ローン支払原資は母が出していたものの,実際に母がマンションに居住していたということでした。
また,調査の結果,マンションの価値よりも残ローンの方が多額であり,実質的な資産価値もないとみられました。

そこで,調停では,関係する証拠を整理して提出したうえで,母によるローン支払原資の負担は,生計の資本としての贈与には当たらず,特別受益にはならないと主張をしました。

その結果,裁判所より,当方の主張通り特別受益には当たらないことを前提とした調停案が提示され,最終的にはおおむね当方の主張通りの内容で遺産分割協議が成立しました。

所感

特別受益とは,相続人の中に,被相続人から遺贈や生計の資本等の贈与を受けたものがいる場合に,その相続人の取得分を減らす等の調整をして遺産分割の実質的な公平をはかる制度です。

遺産分割においては,被相続人からのある相続人への生前贈与が特別受益にあたるか,ということが問題となる事例は少なくありません。しかし,形式的には被相続人からの贈与等とみられる行為があった場合においても,それが特別受益にあたるかどうかは,贈与を裏付ける証拠の有無のほか,その目的や金額,時期,その他の諸事情により結論が変わりうることがあります。

特別受益を主張したい場合も,あるいは主張されている場合も,効果的な主張をするためには,事実関係や証拠の分析,法的観点からの検討が必要となりますので,遺産分割において生前贈与等の取り扱いが問題となる場合は,お早めに弁護士にご相談されることをお勧め致します。


以上
(弁護士 小向俊和)
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