遺産分割調停で先祖伝来の不動産の所有権を取得した事例
- 2020.04.27
1 ご相談の背景・争点
依頼者の兄が亡くなり,その遺産相続について相談を受けました。相続人は兄の妻(外国籍)と依頼者を含む兄弟3人。遺産としては,先祖伝来の居宅があり,現在,兄の妻が1人で居住しています。
依頼者の希望としては,居宅に兄の妻が居住することは構わないが,先祖伝来の不動産なので,仮に兄の妻が相続してしまうと,兄の妻が亡くなった場合,兄の妻の祖国の親族に所有権が渡ってしまうのが困るので,何とか兄弟で所有権を取得したい,ということでした。
2 弁護士の対応・結果
当初は兄の妻と直接交渉も試みましたが,感情的な対立もあったためむしろ第三者を交えて話し合いをした方がよいと考え,遺産分割調停の申立てをしました。
その後何度か調停期日で協議をした結果,概要,不動産の所有権は依頼者ら兄弟たちが取得する,兄の妻に終生不動産への居住を認める,依頼者ら兄弟たちが兄の妻に一定の代償金を支払う,という内容での調停が成立しました。
3 所感
本件では,兄の妻が4分の3の法定相続分を有しており,かつ,居宅に現在も居住中ということで,兄弟が居宅の所有権を取得することはなかなか難しいと思われる事案でしたが,調停手続を利用することにより,第三者関与のもとで当事者双方の希望や合意可能な要素を模索し,調停成立に至ることができました。
なお,この事例は最近の相続法改正前のものですが,今後は,配偶者居住権の活用等も考えられるところです。
(弁護士 小向俊和)