遺留分による争いを、事前の遺留分放棄や、遺言で遺留分相当の遺贈を行うことで防いだ事例
- 2020.04.22
1 ご相談の背景
仙台市に相当な不動産を所有している男性から遺言の相談を受けました。
先妻との間に3名の子をなしたが、先妻が死亡したために再婚し、後妻との間にも1名の子をなした。
後妻は、同居して両親の世話もよくしてくれたので、相続の際に苦労をかけたくない。
遺留分についての争いも起こらないようにして欲しいとの相談でした。
先妻の子のうち2名は生前に一定金額を渡すことにより遺留分を放棄してくれそうだが、1名は連絡も拒否しており遺留分の請求も行ないそう。
2 弁護士の対応
そこで、まず遺留分を放棄してくれそうな2名とは話合いの上、一定金額を代償金として生前に支払って遺留分を放棄する旨の覚書を締結し、家庭裁判所に遺留分放棄許可申立を行ない、許可する旨の審判を得て代償金を支払いました。
もう1名については、遺留分に相当する金額を概算で算出した上、その金額を多少上回るような財産を遺贈し、他は後妻と後妻との子に相続させる旨の遺言を作成しました。
3 結果
遺言を行った男性が亡くなった後、その遺言が執行されましたが、遺留分を放棄した2名は、もちろん何の異論もありません。
もう1名は、初めは遺留分の主張を行ってきたのですが、遺贈を受けた財産が遺留分を超えていることを丁寧に説明したところ、納得して遺留分の主張を取下げてもらえ、遺留分で揉めることもなく、相続の手続を終えることができました。
4 所感
他の相続人の遺留分にも配慮し、生前の遺留分放棄(家庭裁判所の許可が必要なことにご注意下さい。)と遺留分に見合った財産の遺贈を行う遺言を行ったことが、遺留分をめぐる争いを防ぐポイントでした。
(弁護士 官澤里美)