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弟からの特別受益の主張を退けた事例

2023.01.14

事件概要

相談者(兄)は、両親の介護を行い、長年に渡り有形無形の手助けをしていました。

これに両親は感謝し、相談者に通帳・カードの管理を任せるとともに、相談者に相当額の現金を渡したうえで、「弟にも同額を確保しておいて、自分が死んだら渡せるようにしておくように」と指示しました。

相談者はこれに従い、現金を確保しておきました。

両親が死去した際に、相談者は確保しておいた現金と、他の唯一の財産である両親名義の預貯金額の半分を弟に渡しました。

しかし、弟は納得せず「兄は両親からもっと受け取っているはずだ!特別受益だ!」と主張して納得せず、兄に対して「もっと自分に配分されるべき金があるはずだ!出せ!」と猛烈な催促を行いました。

当事務所の対応

まず、当事務所に相談にいらした時点で、相談者(兄)は、弟からの猛烈な催促に疲れ果てていました。

本来、請求する弟の側から遺産分割調停が提起されるべき流れですが、それを待っていてはいつになるか分からないので、すぐに当事務所から「直接の催促をしないように」という受任通知を作成・送付するとともに、こちらから「すでに渡している以上に渡す遺産はない」という趣旨の遺産分割調停を申し立てることにしました。

結果

受任通知の発送により、相談者宛の催促は止まりました。

また、幸い、相談者は両親の通帳の入出金について、詳細な記録を付けていたので、遺産分割調停においては、相談者が認めている以上の特別受益の存在は無く、何に使ったのか分からない、いわゆる使途不明金もごく少額しかありませんでした。

(弟が特別受益と主張していた金額のほとんどは、相談者が通帳やカードを預かる前に、両親が自分で下ろして使っていたお金だということが明らかになりました)

最終的には、相談者から兄に名目程度のお金を支払うことで調停が成立し、両親の思いは果たされることになりました。

担当弁護士の感想

親から通帳とカードを預かる、というのはとにかくトラブルを生みがちです。

生前に財産を渡しておきたい、という希望があるのであれば、生前贈与や家族信託を使って、あとからトラブルとならないような形で渡す、ということが重要になってきます。

また、遺言を書く等の方法で、自分の死後にトラブルとならないような配慮、いわゆる生前対策をしておくことが極めて重要です。

認知症等になってしまったあとではこうした生前対策は不可能になりますので、お早目の相談をお勧めします。

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